離婚・財産分与

離婚時の家の査定はどっちがやる?― 夫婦の査定額が食い違う本当の理由

離婚で家の査定はどっちがやるべきか。夫婦それぞれが査定を取ると金額が食い違うのはなぜか、無料査定と鑑定評価の違いは何か、調停で通用する評価とは何かを、不動産鑑定士が整理します。

著者:吉田 健人·読了 約6
離婚時の家の査定はどっちがやる?― 夫婦の査定額が食い違う本当の理由

「離婚で家を分けることになったが、査定はどっちがやるべきなのだろうか。相手の取ってきた査定額は信用してよいのだろうか」── 財産分与を控えた方から、よくいただくご質問です。

結論から言えば、夫婦のどちらが査定を取っても、相手方がそのまま受け入れることは稀です。なぜなら、不動産会社の査定額は依頼した側に寄りやすい性質を持っており、双方が取れば食い違うのがむしろ自然だからです。

本記事では、査定額が食い違う理由と、無料査定と鑑定評価の違い、そして調停で通用する評価とは何かを、不動産鑑定士の視点で整理します。

離婚時の家の査定、どっちがやっても食い違う理由

査定は営業活動の一環

不動産会社の査定(売却した場合の予想成約価格の見積り)は、売却の媒介契約を獲得するための営業活動として無料で提供されるものです。依頼者の期待に沿った金額が提示されやすく、同じ物件でも3社に依頼すれば3つの異なる金額が返ってくることは珍しくありません。

有利な査定書の持ち寄り合戦になる

住み続けたい側は代償金(家を取得する側が相手方に支払う清算金)を抑えるため低い査定を、受け取る側は高い査定を持ち寄ります。どちらの査定にも詳細な根拠の開示はないため、「どちらが正しいか」を検証できず、協議が感情的な対立に発展しがちです。つまり「どっちがやるか」ではなく、「どちらがやっても決め手にならない」ことが本質的な問題です。

無料査定と鑑定評価の違い

項目不動産会社の無料査定不動産鑑定士の鑑定評価
目的売却の媒介獲得(営業)適正な価格の判定
立場依頼者寄りになりやすい中立・独立の第三者
根拠開示は限定的導出過程を全て記載
拠り所各社独自の手法不動産鑑定評価基準
調停・訴訟証拠としての重みは限定的証拠資料として通用
費用無料有料(国家資格者の責任ある評価)

調停で通用する評価とは

証拠として扱われるのは鑑定評価書

離婚調停・訴訟の場では、不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準に基づいて作成した鑑定評価書が、正式な証拠資料として取り扱われます。無料査定書も参考資料にはなりますが、根拠の開示が乏しいため、相手方が争えば決定打にはなりません。調停委員や裁判所に「この金額はどう導かれたのか」を説明できるかどうかが、資料の重みを分けます。

双方合意で1通の鑑定を取る方法も

当事者双方(またはその代理人弁護士)が合意のうえで、中立の鑑定評価書を1通取得する方法は、費用を折半でき、結果を双方が受け入れやすいという利点があります。評価の入口から中立性が担保されるため、その後の協議が価格の水掛け論から離れ、分与条件の実質的な議論に進みやすくなります。なお、財産分与の割合や対象範囲など法的な論点については、弁護士にご確認ください。

CASE STUDY事例に基づく架空シナリオ

想定ケース:査定書4通で膠着した協議が鑑定評価1通で動き出す

双方が2通ずつ査定書を持ち寄り対立したが、共同で鑑定を取得して合意した想定例

都心の高級マンションをめぐる財産分与協議で、夫側が1.7億円前後の査定書2通、妻側が2億円超の査定書2通を提出。4通の査定書はいずれも根拠の記載が乏しく、半年以上協議が止まっていました。

双方の代理人弁護士が協議し、費用を折半して中立の鑑定評価書を1通取得する方針に合意。取引事例の選定から個別要因の補正まで根拠が明示された鑑定評価額を共通の土台とし、代償金の金額と支払方法について合意に至りました(想定ケースであり、実在の事案ではありません)。

評価で揉める時間そのものが損失

査定額の対立で協議が長引けば、その間の精神的負担に加え、弁護士費用や調停期日の負担も積み上がります。分与額が数千万円単位で動く高級マンションだからこそ、早い段階で「双方が受け入れられる価格の土台」をつくることが、結果的にもっとも合理的な選択になり得ます。

まとめ

  • 家の査定は夫婦のどっちがやっても食い違うのが自然で、決め手にならない
  • 無料査定は営業目的の概算、鑑定評価は不動産鑑定評価基準に基づく中立の価格判定
  • 調停・訴訟で証拠資料として通用するのは鑑定評価書
  • 双方合意で中立の鑑定を1通取れば、費用も対立も抑えられる

査定額の食い違いにお悩みのご本人様、中立な評価資料を検討されている弁護士の先生は、ぜひ一度ご相談ください。初回の無料相談で、鑑定評価の必要性と概算費用をご案内します。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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