売買

マンションの成約価格と売出価格の違いとは? ― 公開相場の正しい読み方を鑑定士が解説

マンションの売出価格と成約価格の違いと、両者が乖離する構造を解説します。ポータルサイトで見える価格はどちらなのか、価格交渉の実態はどうなっているのか、鑑定評価が成約ベースで価格を見る理由までを整理します。

著者:吉田 健人·読了 約6
マンションの成約価格と売出価格の違いとは? ― 公開相場の正しい読み方を鑑定士が解説

「ポータルサイトで同じマンションの売り物件を見て相場をつかんだつもりが、実際の取引価格はそれより安いと聞いた。どちらが本当の相場なのでしょうか?」── マンションの売買をご検討中の方から、よくいただくご質問です。

答えの鍵は、売出価格と成約価格の違いにあります。この2つを区別せずに「相場」を語ると、売主は強気になりすぎ、買主は疑心暗鬼になり、どちらも判断を誤ります。本記事では、マンションの成約価格と売出価格の違いが生まれる構造、公開情報で見えるのはどちらか、そして鑑定評価がどちらを基準にするのかを解説します。

売出価格と成約価格はなぜ乖離するのか

性質がそもそも違う

売出価格は「売主がこの金額で売りたい」という希望の表明であり、成約価格は「売主と買主が実際に合意した」結果です。希望と結果ですから、一致しない方がむしろ自然です。

売出価格には、値引き交渉を見込んだ上乗せ、売主の思い入れ、仲介会社が媒介契約(売却の仲介を委託する契約)を獲得するために提示した強気の査定額などが織り込まれがちです。

価格交渉の実態

中古マンションの取引では、買主からの指値(希望購入価格の提示)を起点に交渉が行われるのが一般的です。端数の調整で収まることもあれば、掲載期間が長引いた物件では数%以上の値引きに至ることもあります。売出価格が適正なら乖離は小さく、強気の価格設定ほど乖離は広がる ── 乖離幅は固定ではなく、初期価格の巧拙を映す鏡です。

乖離幅は市況によっても変わる

相場の上昇局面では、売主の強気な価格でも市場が追いついて成約し、乖離が小さく見えることがあります。逆に調整局面では、過去の相場観を引きずった売出価格と買主の目線の差が開き、乖離は拡大しやすくなります。「今の乖離幅」を知らずに過去の感覚で価格を読むことにも、注意が必要です。

公開情報で見えるのはどちらの価格か

あなたが日常的に目にする価格情報を整理すると、次のようになります。

情報源見える価格留意点
ポータルサイト(売り物件情報)売出価格成約前の希望価格。値下げ履歴は見えにくい
不動産情報ライブラリ(国土交通省)成約ベースの取引価格個別の住戸・階数までは特定できない
レインズ(不動産業者間の物件情報ネットワーク)成約価格一般の方は原則閲覧できない

つまり、一般の方が最も頻繁に目にするポータルサイトの価格は、すべて「まだ売れていない価格」です。売出価格の平均を相場と誤認すると、実勢より高い水準を基準に判断してしまいます。

さらに、掲載中の価格が当初の売出価格から既に値下げされている場合もあり、掲載情報だけでは「その物件がどんな価格の歩みをたどってきたか」は読み取れません。見えている一時点の価格は、交渉と改定のプロセスの断面にすぎないのです。

鑑定評価は成約ベースで価格を見る

不動産鑑定評価では、取引事例比較法(実際に成立した取引事例を収集し、対象物件との差異を補正して価格を求める手法)を用いる際、原則として成約した取引を事例として採用します。希望価格ではなく、市場が実際に受け入れた価格の集積から時価を導くのです。

さらに、事例の取引時点から価格水準が動いていれば時点修正を行い、階層・眺望・方位といった住戸ごとの個別性も補正します。例えば、同じ棟の低層階で成約した事例をもとに高層の好眺望住戸を評価する場合、成約単価をそのまま当てはめるのではなく、階層差・眺望差を金額に引き直して積み上げます。「売出価格の相場観」と「鑑定評価の時価」が食い違うとき、疑うべきはたいてい前者です。

まとめ

  • 売出価格は売主の希望、成約価格は市場が受け入れた結果であり、乖離するのが自然
  • ポータルサイトで見えるのは売出価格のみ。成約ベースの水準は不動産情報ライブラリ等で別途確認する
  • 値引き交渉は指値を起点に行われ、掲載が長引くほど交渉圧力は強まりやすい
  • 鑑定評価は成約した取引事例をもとに、時点修正と個別性の補正を加えて時価を導く

売出価格と成約価格の差をどう読み、いくらで売り出すべきか ── 判断に迷われている売主様・買主様は、ぜひ一度ご相談ください。初回の無料相談で、鑑定評価の必要性と概算費用をご案内します。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

FREE CONSULTATION

鑑定が必要かどうかのご相談だけでも歓迎です

記事に関連するお悩みについて、不動産鑑定士に直接ご相談いただけます。

関連記事

電話で相談無料相談を申込む