離婚・財産分与

財産分与の不動産評価は別居時?裁判時?― 基準時で変わる分与額

財産分与における不動産評価の基準時は、別居時なのか裁判時なのか。相場変動の大きい高級マンションでは、基準時の違いが分与額を大きく左右します。過去時点の評価は鑑定評価の遡及評価で対応可能です。

著者:吉田 健人·読了 約6
財産分与の不動産評価は別居時?裁判時?― 基準時で変わる分与額

「別居してから調停が長引くうちに、マンションの相場が大きく動いてしまった。財産分与の評価は、いつの時点の価格で計算するのだろうか」── 別居期間が長期化した事案で、必ず問題になる論点です。

不動産の評価額は時間とともに変動します。特に東京都心の高級マンション・タワーマンションは相場変動が大きく、「いつ時点で評価するか」という基準時の選択が、分与額を数千万円単位で左右することがあります。

本記事では、財産分与における評価の基準時の考え方と、過去時点の評価に鑑定評価がどう対応できるかを、不動産鑑定士の視点で整理します。

基準時には2つの意味がある

財産の範囲を確定する基準時

まず、「どの財産が分与の対象か」という範囲の確定です。財産分与(婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を離婚時に清算する制度)は夫婦の協力によって形成された財産を対象とするため、経済的な協力関係が終了した別居時を基準に対象財産を確定する、という扱いが実務上一般的とされます。別居後に一方が取得した財産は、原則として対象に含まれないという整理です。

評価額を算定する基準時

次に、「対象財産をいくらと評価するか」という評価の基準時です。こちらは、現実に分与が行われる時点に近い裁判時(離婚時)の価格による、という扱いが一般的とされます。つまり「範囲は別居時、評価は裁判時」という整理です。ただし、事案によって扱いは異なり得ますので、基準時に関する具体的な法的判断は弁護士にご確認ください。

高級マンションでは基準時が結果を左右する

数千万円単位で変わる分与額

たとえば、別居時に1.6億円だったタワーマンションが、調停・裁判が続く2年の間に2億円へ上昇したとします。どちらの時点で評価するかで評価額に4,000万円の差が生じ、2分の1ずつの分与なら分与額は2,000万円変わります。

2,000万円

基準時の違いが分与額に与える差の例

別居時1.6億円・裁判時2億円、2分の1分与の場合

当事者の利害が正面から対立する

相場上昇局面では、マンションを取得して住み続ける側は早い(安い)時点での評価を、代償金(現物を取得する側が相手方に支払う清算金)を受け取る側は遅い(高い)時点での評価を望みます。下落局面では、この利害関係がそっくり逆転します。基準時の主張が対立する事案では、複数時点の評価額を客観的な数字で示せるかどうかが、協議の質を大きく変えます。

過去時点の評価は「遡及評価」で対応できる

遡及評価とは

遡及評価(価格時点を過去の一時点に設定して行う鑑定評価)を用いれば、「別居時点の価格」を今から算定することができます。不動産鑑定評価基準は、価格時点(価格判定の基準日)を過去に設定することを認めており、当時の取引事例や市場動向の資料が確保できる場合に実施可能です。

複数時点の評価で議論の土台をつくる

別居時と現在時点の2時点で鑑定評価を行えば、「基準時の選択によって結論がどれだけ変わるのか」が定量的に明らかになります。差がわずかであれば基準時の争いに時間を費やす必要はなくなり、差が大きければ、その差を前提にどう調整するかという実質的な協議に進めます。基準時そのものの法的な決着は裁判所・弁護士の領域ですが、その判断の前提となる各時点の客観的な価格を示すことは、私たち鑑定士の役割です。

別居時の査定書を後から用意することはできない

「別居した当時に査定を取っておけばよかった」と後悔される方がいらっしゃいますが、不動産会社の査定は原則としてその時点の相場を前提とするもので、過去時点の金額を遡って示すことには適していません。仮に当時の査定書が手元に残っていたとしても、根拠の開示が乏しい営業上の概算である以上、相手方が争えば決め手にはなりません。過去時点の価格を証拠に耐える形で示せるのは、価格時点を明示して作成される鑑定評価書の強みです。

まとめ

  • 財産分与の基準時は「範囲は別居時、評価は裁判時」という扱いが一般的とされるが、法的判断は弁護士への確認が必要
  • 相場変動の大きい高級マンションでは、基準時の違いが分与額を数千万円単位で左右し得る
  • 過去時点の価格は、価格時点を過去に設定する遡及評価により鑑定評価で算定可能
  • 複数時点の評価額を揃えることで、基準時をめぐる議論の土台が整う

別居時点の評価が必要なご本人様、複数時点の評価を検討されている弁護士の先生は、ぜひ一度ご相談ください。初回の無料相談で、鑑定評価の必要性と概算費用をご案内します。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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