鑑定の方法論

タワマン低層階の価値は低いのか?高層階との価格差の構造を鑑定士が解説

タワマンの低層階は高層階に比べて価値が低いと言われますが、その価格差はどのような構造で生まれるのでしょうか。分譲時の値付けと中古市場での再評価、低層階が見直される場面、相続税評価の階数補正との関係を解説します。

著者:吉田 健人·読了 約6
タワマン低層階の価値は低いのか?高層階との価格差の構造を鑑定士が解説

タワマン(タワーマンション)の低層階は、「高層階に手が届かない人の妥協の選択」と語られがちです。しかし、低層階の価値は本当にそれだけの位置づけなのでしょうか?

価格差には構造があり、その構造を知れば、低層階の価値を冷静に見ることができます。本記事では、低層階と高層階の価格差がどう生まれ、どのような場面で低層階が相対的に見直されるのか、そして相続税評価の階数補正とどう関係するのかを、鑑定評価の視点から解説します。

低層階と高層階の価格差はどう生まれるか

出発点は分譲時の値付け

タワーマンションの階層別の価格差は、まず分譲時にデベロッパーが設計する価格表から始まります。眺望・日照・ステータス性を織り込み、上層階ほど高く値付けされるのが通例で、大規模タワーでは最上階クラスと低層階の坪単価に1.5倍以上の開きが付くこともあります。この価格差は「1階上がるごとに一定率」という単純なものではなく、最上階付近にプレミアムが集中する形になりやすいことが特徴です。詳細は「階層別格差分析」で解説したとおりです。

中古市場での再評価

重要なのは、分譲時の価格差がそのまま中古市場で維持されるとは限らないことです。中古市場では、実際の眺望や住み心地に基づいて価格差が付け直されます。たとえば隣接地に新たな建物が建ち眺望が塞がれた高層階は、分譲時のプレミアムを維持しにくくなります。逆に、植栽や街並みへの近さといった低層階固有の環境が評価される物件もあります。

私たち鑑定士が同一棟内の中古取引を分析すると、階層による価格差は物件ごとに幅があり、分譲価格表の傾きとは異なる傾きが観察されることが珍しくありません。分譲時の値付けは「仮の答え」であり、中古市場が「答え合わせ」をする──これが価格差の基本構造です。

低層階が相対的に見直される場面

生活実感ベースの需要

中古市場では、次のような理由で低層階を積極的に選ぶ需要層が存在します。

  • エレベーターの待ち時間が短く、外出・帰宅の動線が速い
  • 災害・停電時に階段での避難・帰宅が現実的
  • 小さな子どものいる世帯にとって外遊びや送迎がしやすい
  • 同じ予算で高層階より広い住戸に手が届く

こうした実需(実際に住むための需要)は景気変動の影響を受けにくく、低層階の価格の下支えになります。

賃料差は価格差ほど開かない

賃貸市場では、階層による賃料の差は売買価格の差ほど大きく開かない傾向が観察されます。数年で住み替える借り手は、眺望のプレミアムより立地と月額賃料を重視するためです。その結果、同じ棟の中では低層階のほうが利回り(年間賃料収入と価格の比率)が相対的に高くなりやすいという構造があります。これは低層階の価値を収益面から支える要素と言えます。

相続税評価の階数補正との関係

通達による階数の織り込み

タワーマンションでは、市場価格に比べて相続税評価額が大幅に低くなる乖離が問題となり、令和4年4月19日最高裁判決を契機に評価ルールが見直されました。現在は「居住用の区分所有財産の評価について」(法令解釈通達。令和6年1月1日以後の相続等に適用)により、築年数・総階数・所在階などから評価乖離率を算定し、評価額を補正する仕組みになっています。所在階が高いほど評価額が引き上げられる方向に働く算式です。

低層階は乖離が相対的に小さい

この仕組みを裏返すと、低層階は市場価格と相続税評価額の乖離がもともと相対的に小さく、通達による補正の影響も高層階より小さい傾向にあります。高層階に付いていた「評価差を利用した節税効果」が通達で縮小した現在、階数選びを税負担の観点だけで考える意味は薄れており、市場での価値そのものに立ち返って階数を見る局面に入ったと言えます。なお、個別の相続税評価の計算は税理士にご確認ください。

まとめ

  • 価格差は「分譲時の値付け」を出発点に、中古市場の再評価で付け直される
  • 眺望の変化などにより、高層階のプレミアムが分譲時のまま維持されるとは限らない
  • 低層階には実需・防災・利回りの面で固有の支持要因がある
  • 相続税評価の階数補正により、高層階の税務上の優位は縮小した
  • 低層階か高層階かは、価格差の構造と自身の目的に照らして判断すべきもの

タワーマンションの相続・売却・財産分与で適正な時価が必要な相続人の方、弁護士・税理士の先生は、ぜひ一度ご相談ください。初回の無料相談で、鑑定評価の必要性と概算費用をご案内します。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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