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築25年超のタワマンで一時金は出るか ― 2回目の大規模修繕費用と積立不足の見抜き方

築25年を超えたタワーマンションの2回目の大規模修繕では、昇降機や給排水設備の更新が重なり、仮設工事の比率も高くなります。国交省調査をもとにタワー特有のコスト構造を整理し、一時金徴収リスクを長期修繕計画から読み解く手順と、価格への反映経路を鑑定士が解説します。

著者:吉田 健人·読了 約16
築25年超のタワマンで一時金は出るか ― 2回目の大規模修繕費用と積立不足の見抜き方

築25年を超えたタワーマンションにお住まいの方、あるいは中古での購入を検討されている方から、「2回目の大規模修繕で一時金を請求されるのではないか」というご不安を伺うことがあります。総会の議案書に「修繕工事資金の件」という一文を見つけて、心配になった方もいらっしゃるでしょう。

この不安には根拠があります。超高層マンションの大規模修繕は、全国的に見てもまだ1回目を終えたばかりの棟が大半で、2回目以降の実績データが市場に十分蓄積していないためです。前例が乏しいということは、費用の見通しも立てにくいということです。

本記事では、公的な調査データをもとに、タワーマンションの大規模修繕が2回目以降でどう変質するのか、タワー特有のコスト構造はどこにあるのか、そして一時金徴収のリスクをどの資料のどの数字から読み取るのかを、私たち鑑定士が価格形成要因を検討するときの手順に沿って整理します。

タワマンの大規模修繕は「2回目」から性格が変わる

超高層の修繕はまだ1回目が中心

国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(200社818件を集計)によれば、集計対象のうち地上20階建て以上の超高層マンションは5.5%にあたる45件でした。その築年数は15年以下が53.3%、20年以下までを合わせると約9割を占めます。

工事回数別に超高層の占める割合を見ると、1回目の工事サンプル347件では12.4%が超高層である一方、2回目の199件では0.5%、3回目以上の243件では0.4%にとどまります。超高層マンションの2回目以降の大規模修繕は、全国的にもまだ事例が出そろっていないのです。

これは、管理組合が2回目の工事を検討するとき、「同規模・同構造の他棟ではいくらだった」という比較対象を見つけにくいことを意味します。見積りの妥当性を検証しづらい状況で、金額だけが先に提示される。ここが、築25年超のタワーマンションが直面している構造的な問題です。

2回目・3回目で工事項目が入れ替わる

大規模修繕は、回を重ねるごとに同じ工事を繰り返すわけではありません。国土交通省が平成30年に公表した実態調査(134社944サンプル)では、工事金額に占める給水設備の割合が1回目の2.1%から2回目には10.5%へ跳ね上がり、建具・金物等は1回目1.1%、2回目3.4%、3回目以上11.6%と回を追って増えることが示されています。

背景にあるのは部位ごとの修繕周期の違いです。国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改定)が示す修繕周期の例では、主な部位の目安は次のとおりです。

部位補修・修繕の周期取替えの周期
屋上防水・外壁塗装12〜15年24〜30年
給水管・排水管19〜23年30〜40年
昇降機12〜15年26〜30年
建具関係12〜15年34〜38年

同じ令和3年度調査では、工事回数別の平均修繕周期は1回目が15.6年、2回目が14.0年、3回目が12.9年と、回数が増えるほど短くなる傾向が確認されています。1回目を築15年前後で実施した棟なら、2回目は築29年前後に訪れる計算です。

この時期は、昇降機の取替え周期(26〜30年)と重なります。給排水管の取替え(30〜40年)も視野に入ってきます。外壁と防水だけで済んだ1回目とは、支出の規模も性質も違うのです。2回目が本番と言われるのは、このためです。

タワーマンション特有のコスト構造はどこにあるか

費用の差は「仮設」に集中している

令和3年度調査は、超高層とそれ以外で工事内訳を比較しています。両者の差が最も大きかったのは仮設工事で、超高層が29.0%、それ以外が21.9%でした(全体平均22.8%)。工事費の3割近くが、修繕そのものではなく足場や安全設備に費やされるということです。

施工側の実感とも一致します。同調査で超高層マンションに特有の難しさ(複数回答)を尋ねたところ、最も回答が多かったのは「仮設工事」で、次いで「外壁塗装」「施工計画全般」でした。外壁工事で難しさを感じる理由としては「安全対策」が約7割を占めています。

長期修繕計画作成ガイドラインも、超高層の場合は免震構造などの躯体関係、航空障害灯などの設備関係に加え、修繕工事の仮設足場にゴンドラ等を使用するなど施工方法が異なるため、これらを考慮する必要があると明記しています。地上40階の外壁に一般的な枠組足場は架けられません。ゴンドラや移動昇降式足場を使い、強風時には作業を止める。その積み重ねが仮設比率の差になって表れています。

「戸当たり」では差が見えにくい

意外に思われるかもしれませんが、同じ調査で戸当たり工事金額を比較すると、超高層とそれ以外で大きな差は見られませんでした。床面積当たりでは、むしろ超高層のほうが安い傾向にあると報告されています。住戸面積が広く総戸数も多いため、分母が大きくなって単価が薄まるという算術上の結果です。

ここに判断を誤らせる罠があります。「戸当たり単価が平均並みだから妥当だ」という説明は、必要な積立総額が平均並みでよいという保証にはなりません。仮設に要する費用が構造的に高く、昇降機の基数も多く、機械式駐車場を抱える棟も少なくない。同じ戸当たり単価でも、30年間に積み上げるべき総額は一般的なマンションより大きくなります。

さらに、施工できる会社が限られます。令和3年度調査で回答企業に超高層マンションの受注実績を尋ねたところ、実績があると答えた企業は24.2%にとどまり、受注に向けた取組みも「対策はしていない」が40.2%で最多でした。相見積りの母数が減れば、価格競争は働きにくくなります。

一時金徴収のリスクはどこに現れるか

見るべきは4つの数字の突き合わせ

一時金が出るかどうかは、感覚ではなく引き算で判定できます。必要なのは次の4つの数字です。

  1. 次回の大規模修繕の想定工事費(長期修繕計画の推定修繕工事費)
  2. 同時期に計上されている昇降機・給排水設備などの更新費用
  3. 工事実施年度における修繕積立金の残高見込み(計画の収支表)
  4. その残高見込みが、いつ作成された単価に基づく計画なのか

4番目が見落とされがちです。工事費が上昇した局面で、数年前の単価のまま組まれた計画の残高見込みは、そのまま信じられません。ガイドラインは、計画期間を30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とすることを求めています。計画期間が短い、あるいは直近の見直しが古い計画は、それ自体が注意信号です。

想定されるケース ― 築29年で2回目を迎える400戸のタワー

地上40階・総戸数400戸・専有面積80平方メートル、築15年で1回目の大規模修繕を終え、築29年に2回目を予定しているタワーマンションを想定します。数値はいずれも仮置きですが、公的データの水準に沿って置いています。

項目金額備考
2回目の大規模修繕(建築系)4.4億円戸当たり110万円×400戸
昇降機の取替え1.5億円取替え周期26〜30年と重なる
給排水管の更生・更新1.8億円更生19〜23年、取替え30〜40年
支出合計7.7億円
工事時点の積立残高見込み6.0億円長期修繕計画の収支表
不足額1.7億円戸当たり約42.5万円

戸当たり110万円は、令和3年度調査における1回目の中央値110.2万円と同水準を置いたものです。残高6.0億円は、段階増額積立方式(当初の積立額を低く抑え、段階的に引き上げていく積立方法)で長く低い水準に据え置いてきた棟を想定しています。なお、更生とは既存の配管を撤去せず内面を清掃・被覆して延命する工事を指します。

不足額1.7億円に対して管理組合が取りうる選択肢は、原則として三つです。第一に一時金の徴収で、戸当たり約42.5万円を現金で拠出することになります。第二に金融機関からの借入れで、仮に15年返済・金利1.5%で借りれば年間返済額はおよそ1,266万円、戸当たり月額に直すと約2,640円の上乗せです。第三に工事範囲を削る、あるいは時期を先送りする選択ですが、劣化は進行しますから、次回工事の費用がさらに膨らみます。

いずれの選択肢も総会の決議を要します。そしてこの三択を迫られる時点で、本来必要だった積立水準に達していなかったという事実が確定します。

重要事項調査報告書と議事録で確認する項目

管理会社が発行する重要事項調査報告書と、直近3年程度の総会議事録・長期修繕計画書が、確認の基本セットです。

6番目の滞納は軽視されがちですが、無視できません。国土交通省「令和5年度マンション総合調査」によれば、管理費・修繕積立金を3か月以上滞納している住戸があるマンションは30.1%にのぼり、築年数が古いほどその割合は高くなります。滞納が多い棟では、値上げや一時金の決議そのものが難航します。同調査では現在の積立額が計画に比べて不足しているマンションが36.6%を占め、管理組合が挙げる将来への不安でも「修繕積立金の不足」が39.6%にのぼります。

修繕履歴と一時金は価格にどう織り込まれるか

価格を動かすのは金額よりも不確実性

ここは率直に申し上げます。先ほどの試算で出た戸当たり42.5万円という一時金は、1億5,000万円の住戸価格に対して約0.3%です。借入れを選んだ場合の月額2,640円の負担増が買い手の借入余力を削る額も、金利1.5%・返済期間35年で計算すればおよそ86万円で、価格の0.6%程度にとどまります。金額そのものは、価格を大きく動かす規模ではありません。

価格に効くのは別の要素です。第一に、金額が確定していない状態です。「一時金を検討中」という議事録だけがあり、金額も時期も決まっていない住戸は、買い手が最悪値を想定して指値を入れてきます。第二に、計画が長く見直されていない棟では、不足額が戸当たり数百万円の規模に膨らんでいる場合があります。第三に、総会で決議できず工事が先送りされた棟では、外壁やシーリングの劣化が進み、それが内覧で目に見える形になります。

一時金が出ること自体より、一時金が出るかどうか分からない状態、あるいは出せない状態のほうが、価格には重く響きます。断言します。積立金の水準そのものについては、修繕積立金の値上げでマンションの価値は下がる?で整理していますので、あわせてご覧ください。

鑑定評価では個別的要因として反映する

不動産鑑定評価基準では、建物の維持管理の状態が価格形成要因の一つとして位置づけられています。私たち鑑定士は、タワーマンションの住戸を評価するにあたり、修繕の実施履歴、長期修繕計画の内容と直近の見直し時期、積立金の残高と滞納状況、一時金や借入れの予定を、個別的要因(対象不動産に固有の価格形成要因)として検討します。

取引事例比較法(類似する取引事例の価格を基準に比較して価格を求める手法)を用いる場合は、事例物件との管理状態の差を補正項目に織り込みます。収益還元法を併用する場合、所有者が負担する修繕積立金は必要諸経費として計上しますから、恒久的な値上げは純収益の減少としてそのまま価格に反映されます。一時金のような一回限りの支出は、金額と時期が確定していればその現在価値を控除するという扱いが考えられ、確定していない場合は前提条件を明示したうえで判断することになります。

築年数を重ねても市場で選ばれ続ける棟の条件は、築20年超でも価値が続くタワーとは?で整理したとおり、立地・管理・修繕履歴・共用空間の四つです。2回目の大規模修繕をどう乗り切ったかという事実は、このうち修繕履歴そのものであり、以後の評価に長く影響します。なお、中古マンションの相場の調べ方で触れた公開情報だけでは管理の健全性までは分かりません。成約価格の水準を把握したうえで、重要事項調査報告書の数字と突き合わせてください。

まとめ

築25年を超えたタワーマンションの2回目の大規模修繕は、外壁と防水が中心だった1回目とは支出の性質が変わります。昇降機や給排水設備の更新が重なり、仮設に要する費用が構造的に高く、比較対象となる事例も乏しい。一時金徴収のリスクは、この三条件が揃うところに生まれます。

要点を振り返ります。

  • 令和3年度の国交省調査では超高層マンションの2回目以降の工事事例はごくわずかで、見積りの妥当性を比較検証しにくい
  • 工事金額に占める仮設工事の割合は超高層が29.0%、それ以外が21.9%で、差はほぼ仮設に集中している
  • 戸当たり工事金額は超高層とそれ以外で大差ないが、必要な積立総額が平均並みでよいことを意味しない
  • 修繕周期の目安は昇降機の取替えが26〜30年、給排水管の取替えが30〜40年で、2回目の大規模修繕と重なりやすい
  • 一時金の有無は、推定工事費・設備更新費・積立残高見込み・計画の見直し時期という4つの数字の引き算で判定できる
  • 価格に効くのは一時金の金額そのものより、金額が確定していない状態や、決議できず工事が先送りされている状態である

総会で工事資金の議案に向き合う区分所有者様、築古タワーの購入を検討されている方、売却前に管理の健全性を整理しておきたい所有者様にとって必要なのは、「タワマンは修繕費が高い」という漠然とした不安ではなく、ご自身の棟の計画と残高に基づいた具体的な検証です。

都心の高級マンション・タワーマンションの評価をご検討の方は、初回無料相談をご利用ください。修繕の履歴と長期修繕計画の状態を価格形成要因として織り込んだうえで、現時点の価値水準と、鑑定評価書・価格等調査報告書のどちらが適しているかをご案内します。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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