相続

二次相続を見据えたマンション対策 ― 一次相続の分け方が税額を左右する理由

二次相続まで見据えたマンション対策はなぜ必要か。配偶者の税額軽減に頼った一次相続の分け方が二次相続の税額を押し上げる構造と、分割協議の材料としての鑑定評価の使い方を不動産鑑定士が解説します。

著者:吉田 健人·読了 約6
二次相続を見据えたマンション対策 ― 一次相続の分け方が税額を左右する理由

「配偶者が相続すれば税金はほとんどかからないと聞いたので、自宅マンションは母がすべて相続した」。一次相続ではよくある選択ですが、その分け方が数年後の二次相続で子の税負担を大きく押し上げることがあるのをご存じでしょうか。

二次相続まで見据えたマンション対策は、税額の計算だけでなく「マンションをいくらと評価するか」という価値判断と切り離せません。高級マンション・タワーマンションを専門とする当事務所の鑑定士の視点から、一次相続の分け方が二次相続に効いてくる構造と、その検討材料としての鑑定評価の役割を整理します。

二次相続とは ― 一次相続の分け方がなぜ税額に効くのか

二次相続(最初の相続で遺産を受け取った配偶者が亡くなった際に発生する、二度目の相続)では、一次相続と条件が2つ変わります。

第一に、配偶者の税額軽減(配偶者が取得した遺産のうち、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか大きい額まで相続税がかからない制度)が使えません。二次相続の相続人は通常、子だけだからです。第二に、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)が、相続人が1人減る分だけ小さくなります。

つまり、一次相続で配偶者に遺産を寄せるほど一次の税額は減りますが、その分が二次相続に持ち越され、軽減の効かない状態で課税されます。一次・二次の合計で見ると、配偶者にすべて寄せる分け方がかえって不利になる場合があるのです。

配偶者の税額軽減とマンション評価の関係

「どちらの相続でマンションを渡すか」の設計

現預金と違い、マンションは相続税評価額と市場価格が乖離しやすい資産です。とくにタワーマンションは、2024年導入の区分所有補正率を適用しても評価水準は市場価格の6割が下限であり、また市況によって時価そのものが一次と二次で大きく動き得ます。「評価額の低い資産をどちらの相続で誰に渡すか」は、一次・二次トータルの税負担を左右する設計要素になります。

CASE STUDY事例に基づく架空シナリオ

自宅タワーマンションを一次相続で母にすべて寄せた想定ケース

一次相続の税額はゼロになったが、二次相続で子の負担が膨らんだ一般化した想定例

父の相続で、湾岸タワーマンションと金融資産のすべてを母が取得。配偶者の税額軽減により一次相続の納税額はゼロとなり、家族は「良い相続ができた」と考えていた。

数年後の母の相続では、マンションの市場価格が上昇していたうえ、税額軽減のない状態で子2人がまとめて課税を受け、一次で一部を子が取得していた場合と比べて合計税負担が重くなった。時価の推移を把握しないまま一次の分け方を決めたことが、結果として選択肢を狭めていた。

分割協議の材料としての鑑定評価

二次相続対策の実務は、「マンションの価値の共通認識づくり」から始まります。鑑定評価書(不動産鑑定評価基準に基づき不動産鑑定士が作成する評価書)は、次の場面で分割協議の材料として機能します。

  • 一次相続の分割協議で、配偶者と子がマンションと金融資産をどう組み合わせて取得するかを検討する場面
  • 通達評価と時価の乖離が大きい物件で、税理士がシミュレーションの前提とする時価を確認する場面
  • 将来の二次相続や売却も視野に、現時点の適正な時価を記録として残しておく場面

評価額の根拠が曖昧なままでは、相続人間の話し合いも税額の試算も砂上の楼閣になりかねません。

検討のタイミングは一次相続の直後から

二次相続対策というと「二度目の相続が近づいてから考えるもの」と思われがちですが、実際には一次相続の分割協議こそが最大の分岐点です。相続税の申告期限は10ヶ月、鑑定評価書の作成には通常2〜4週間程度を要しますから、一次相続が発生したら早い段階で、税理士とあわせて時価把握の要否を検討しておくことをおすすめします。当事務所では、意思決定の初期段階に適した調査報告書(簡易鑑定)20万円〜、正式な鑑定評価書40万円〜をご用意しています。

まとめ

  • 二次相続では配偶者の税額軽減が使えず基礎控除も減るため、一次相続で配偶者に寄せた分け方が合計税負担を増やすことがある
  • 評価額と時価が乖離しやすいマンションは、どちらの相続で誰に渡すかの設計が重要になる
  • 具体的な税額比較は税理士にご確認いただきつつ、その前提となる時価は鑑定評価で固める
  • 鑑定評価書は一次相続の分割協議の段階から、共通認識づくりの材料として活用できる

マンションを含む相続で二次相続まで見据えた検討をしたい相続人の方・地権者様は、ぜひ一度ご相談ください。初回の無料相談で、鑑定評価の必要性と概算費用をご案内します。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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