区分所有補正率の計算方法 ― 4つの指数と計算例でわかるタワマン相続税評価
区分所有補正率はどう計算するのか?築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度の4指数から評価乖離率を求める手順を、タワーマンションの具体的な計算例つきで不動産鑑定士が解説します。

「自分のマンションの相続税評価額は、結局いくらになるのか」──2024年(令和6年)1月から適用が始まった区分所有補正率により、タワーマンションの相続税評価は計算の仕組みそのものが変わりました。本記事では、補正率の計算手順を具体例で追いながら、計算してもなお残る「時価との乖離」に不動産鑑定評価がどう関わるかを解説します。
区分所有補正率の計算式
計算の全体像
区分所有補正率は、次の3ステップで求めます。
- 評価乖離率を4つの指数から計算する
- 評価乖離率の逆数である評価水準を求める
- 評価水準に応じて補正率を決定する
ステップ1:評価乖離率を求める
評価乖離率は、次の算式で計算します。
評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220
| 指数 | 内容 | 係数 |
|---|---|---|
| A | 築年数 × ▲0.033 | 築年数は1年未満切上げ |
| B | 総階数指数(総階数 ÷ 33、1を超える場合は1)× 0.239 | 小数点以下第4位切捨て |
| C | 所在階 × 0.018 | 複数階にまたがる場合は低い方の階 |
| D | 敷地持分狭小度(敷地利用権の面積 ÷ 専有面積)× ▲1.195 | 小数点以下第4位切上げ |
築年数が経つほどマイナス、総階数が高く所在階が上がるほどプラス、敷地の持分が小さい(=高層で戸数が多い)ほどプラスに働く構造です。つまり築浅・高層・高層階のタワーマンションほど評価乖離率が大きく計算されます。
ステップ2・3:評価水準から補正率を決める
評価水準 = 1 ÷ 評価乖離率
| 評価水準 | 区分所有補正率 |
|---|---|
| 0.6未満 | 評価乖離率 × 0.6(評価額が引き上げられる) |
| 0.6以上1以下 | 補正なし(従来どおりの評価) |
| 1超 | 評価乖離率(評価額が引き下げられる) |
「市場価格理論値の6割」に評価水準をそろえる、というのが制度の狙いです。
計算例:湾岸タワーマンションのケース
築5年・総階数40階・所在階30階・専有面積60㎡・敷地利用権面積12㎡の住戸で計算してみます。
- A:5年 × ▲0.033 = ▲0.165
- B:40 ÷ 33 = 1.21 → 1超のため1.000 × 0.239 = 0.239
- C:30階 × 0.018 = 0.540
- D:12㎡ ÷ 60㎡ = 0.2 × ▲1.195 = ▲0.239
評価乖離率 = ▲0.165 + 0.239 + 0.540 + ▲0.239 + 3.220 = 3.595
評価水準は 1 ÷ 3.595 ≒ 0.278 で0.6未満。したがって区分所有補正率は 3.595 × 0.6 = 2.157 です。
2.157倍
このケースの区分所有補正率
従来の相続税評価額に乗じる倍率(築5年・40階建て・30階住戸の計算例)
従来方式の相続税評価額が4,000万円だった場合、補正後は約8,628万円。市場価格が1.4億円なら、評価額は市場価格の約62%となり、制度が想定する「6割水準」に近づく計算です。
計算してもなお残る「乖離」
補正率は市場価格を直接見ていない
注意すべきは、この計算式が築年数・階数などの形式的な指標だけで作られていることです。眺望の質、角部屋か否か、リノベーションの有無、デベロッパーブランド、直近の相場変動──市場価格を実際に動かす要因は、算式のどこにも登場しません。
そのため、次のようなケースでは補正後の通達評価と時価の間に依然として大きな差が生じます。
- 眺望阻害や住戸内の状態不良で、時価が通達評価を下回っているケース
- 相場急騰エリアで、時価が補正後評価をさらに大きく上回っているケース
- 借地権付きや事故歴など、個別事情が価格に織り込まれるべきケース
時価が通達評価を下回るなら、鑑定評価で立証できる
通達評価が時価より高い場合、不動産鑑定士による鑑定評価書で適正な時価を立証し、時価による申告を検討する余地があります(総則6項の適用が争われた令和4年最高裁判決の逆の構図です)。逆に時価が著しく高いのに通達評価のまま申告すると、否認リスクを抱えることになります。どちらの方向でも、「市場の実勢」と「計算上の評価」の距離を測ることが出発点になります。
まとめ
- 区分所有補正率は「評価乖離率(4指数+3.220)→評価水準→補正率」の3ステップで計算する
- 築浅・高層・高層階ほど補正率は大きく、評価額は市場価格の6割水準に近づく
- ただし算式は市場価格そのものを見ていないため、個別の物件では時価との乖離が残る
- 乖離が大きい場合は、鑑定評価書による時価立証が申告の選択肢になる
タワーマンションの相続税評価でお悩みの方、顧問先の申告で評価方針を検討中の税理士の先生は、ぜひ一度ご相談ください。初回の無料相談で、鑑定評価の必要性と概算費用をご案内します。
REFERENCES
免責事項
本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。
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