相続

タワマン節税の廃止はいつから?2024年改正の中身と、それでも残る評価差の構造

タワマン節税の廃止はいつからか。2024年1月適用の区分所有補正率で何が変わり、何が残ったのかを整理し、相続直前購入などのリスクと、時価把握・鑑定評価を軸とする改正後の正攻法を解説します。

著者:吉田 健人·読了 約6
タワマン節税の廃止はいつから?2024年改正の中身と、それでも残る評価差の構造

「タワマン節税は廃止されたと聞いたが、いつから、何が変わったのか」。そして「もう対策の余地はないのか」。こうした疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。インターネット上には「完全に封じられた」「まだ有効」と正反対の情報が混在しており、かえって混乱を招いています。

高級マンション・タワーマンションを専門とする当事務所の鑑定士の立場から、結論を先に申し上げます。2024年の改正で評価差は大幅に縮小しましたが、制度上ゼロにはなっていません。ただし、評価差を狙い撃ちする行き過ぎた対策には明確なリスクがあり、改正後に取るべきは「時価を正確に把握したうえでの正攻法」です。

タワマン節税の「廃止」はいつからか ― 2024年1月1日以後の相続・贈与から

正確には、タワマン節税を封じる制度改正は「廃止」という法令用語ではなく、国税庁が2023年9月に発出した法令解釈通達「居住用の区分所有財産の評価について」による評価方法の見直しです。適用は2024年(令和6年)1月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した物件からです。

何が変わったのか:区分所有補正率の導入

改正前は、土地(路線価×敷地権割合)と建物(固定資産税評価額)の積み上げで評価され、高層階では相続税評価額が市場価格の3〜4割程度に圧縮されることも珍しくありませんでした。改正後は、区分所有補正率(築年数・総階数・所在階・敷地持分狭小度の4要素から算定される補正率)を乗じ、評価水準(従来評価額÷想定市場価格)が0.6未満の物件は0.6まで引き上げられます。

それでも評価差が残る構造

0.6

改正後の評価水準の下限

市場価格に対する相続税評価額の比率。裏を返せば約4割の乖離は制度上残る

改正後も「市場価格×0.6」が基準である以上、現金で保有する場合と比べた評価差は残ります。また、補正率は画一的な算式で決まるため、眺望や希少性で実勢価格が突出する物件では乖離がさらに大きく、逆に管理不良で市況が悪い物件では評価額が時価を上回ることさえあります。「一律に節税が消えた」のではなく、「物件ごとの乖離の個別性が増した」というのが実態です。

行き過ぎた対策のリスク ― 相続直前の購入は要注意

評価差が残るからといって、相続直前にタワーマンションを購入し、相続後すぐに売却するような対策は極めて危険です。令和4年4月19日最高裁判決は、路線価等による通達評価を否認し、鑑定評価額による課税を適法と認めました。その根拠が、財産評価基本通達6項(通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる場合に国税庁長官の指示で評価できるとする定め、いわゆる総則6項)です。

改正後の正攻法 ― 時価の把握と鑑定評価の活用

改正後に有効なのは、評価差を狙う手法ではなく、保有・取得する物件の時価を正確に把握し、説明できる状態にしておくことです。

  • 生前の資産整理の段階で、通達評価と時価の乖離を確認しておく
  • 時価が通達評価を下回る物件では、鑑定評価書(不動産鑑定評価基準に基づき不動産鑑定士が作成する評価書)で適正な時価を立証し、過大な納税を避ける
  • 時価が通達評価を大きく上回る物件では、乖離の程度を把握してリスクを管理する

いずれも「時価がいくらか」が出発点であり、ここが私たち鑑定士の役割です。

検討はいつ始めるべきか

時価の把握は、相続が発生してからでも可能ですが、生前の資産整理の段階で行う方が選択肢は広がります。相続発生後は申告期限(10ヶ月)という時間的制約の中で判断を迫られるためです。また、タワーマンションの市況は金融環境や海外投資家の動向で変動しやすく、数年前に把握した時価が現在も妥当とは限りません。節目ごとに時価を確認し直すことが、改正後の環境では堅実な備えになります。市場の先行きについては様々な見方がありますが、当事務所として将来の価格を断定することはせず、あくまで評価時点の適正な時価を示すのが鑑定評価の役割です。

まとめ

  • タワマン節税を封じる評価見直しは2024年1月1日以後の相続・贈与から適用されている
  • 評価水準の下限は市場価格の0.6であり、評価差は縮小したが構造としては残る
  • 相続直前の購入など行き過ぎた対策は、令和4年最高裁判決・総則6項による否認リスクを伴う
  • 改正後の正攻法は時価の正確な把握であり、鑑定評価書がその基礎資料となる

タワーマンションをお持ちの方、生前対策を検討中の方は、ぜひ一度ご相談ください。初回の無料相談で、鑑定評価の必要性と概算費用をご案内します。

免責事項

本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。

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